大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成元年(行ケ)53号 判決

一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本件審決理由の要点、本件商標の構成、指定商品登録出願日及び設定登録日並びに、引用商標の構成、指定商品、登録出願日、設定登録日及びその更新登録日が、いずれも原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。

二 そこで、本件商標と引用商標との類否について判断する。

1 外観上の類否について

本件商標は、別紙(一)のとおり、片仮名文字と欧文字を二段に横書きにしてなる構成として登録されているのであるから、これと他の登録商標との類否を判断する場合においては、右の二段横書きの構成自体により対比すべきである。原告主張のような本件商標の使用態様についてはこれを認めるに足りる証拠はないし、仮にそのような事実があるとしても、本件商標の構成のうち、欧文字のみを抽出して対比することは許されないものというべきである。しかして、別紙(一)の本件商標の構成と別紙(二)の引用商標の構成とを対比すれば、両者の全体的構成が外観上類似していないことは明らかである。

また、仮に原告の主張にしたがい、本件商標の欧文字部分と引用商標を対比しても 本件商標の一部である欧文字部分は、大文字のみで表わされた「WELLIN」の六文字を横書きしてなる構成であるのに対し、引用商標は、先頭文字の「W」のみが大文字で、それに続く「ellamin」は全て小文字からなる構成であつて、その構成は互いに態様を著しく異にしてなるものであることは明らかである。

いずれにせよ、この点に関する原告の主張は失当である。

なお、原告の援用する裁判例(東京高裁昭和五七年一二月一六日判決)は本件とは事案を異にするものであつて、右結論を左右するものではない。

よつて、本件商標と引用商標とが外観上類似の商標であると認めることはできない。

2 称呼上の類否について

本件商標は「ウエルイン」の称呼を生ずるものであるのに対し、引用商標は「ウエラミン」の称呼を生ずるものであつて、両者は中間音において「ルイ」と「ラミ」の差異があることについては当事者間に争いがない。

このように、両商標の称呼は五音により構成されているにすぎないのに、そのうち中間の二音(第三音と第四音)において差異があり、その差異音である「ルイ」と「ラミ」を対比すると、「ル」と「ラ」は同行音といつても、前者は「u」、後者は「a」を母音要素としており、後者は同列音といつても、前者は母音「i」そのものであり、後者はこれと「m」が結合した子音で、それぞれ互いに発音構造を異にし、音自体としての聴き分けはさして困難ではなく、かような子音と母音(ルイ)、子音と子音(ラミ)による音構成の差に鑑れば、両商標を一連に称呼するも、全体の語調、語感からみて、両者が相紛れるものとは認めがたく、その間に誤認混同を生ずるおそれはないものというべきである。なお、原告の主張する各審決例は、いずれも本件と事案を異にし、これをもつて本件商標と引用商標の類否判断にそのまま妥当するとは解し得ない。

よつて、本件商標と引用商標とは称呼上類似の商標であると認めることもできない。

3 観念上の類否について

さらに、観念についてみるに、本件審決が認定するように、本件商標と引用商標とはいずれも特定の意味合いを表現しない造語よりなるものであるから、観念の点で両者を比較することはできず、観念上も類似するものと認めることはできない。

4 以上のとおり、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれからみても相紛れることのない非類似の商標であるから、これと結論を同じくする本件審決の判断は相当であり、取り消されるべき違法はない。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却する。

〔編注1〕本件における特許庁における手続の経緯は左のとおりである。

被告は、別紙(一)表示のとおりの「ウエルイン」の片仮名文字と、「WELLIN」の欧文字を二段に横書きしてなり、第四類「化粧品 その他本類に属する商品」を指定商品とする登録第一六六八七六八号商標(昭和五二年一月二一日登録出願、同五九年三月二二日登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。原告は、昭和五九年九月二一日、被告を被請求人として、本件商標の登録無効審判を請求したところ、特許庁は、これを同庁昭和五九年審判第一八〇一九号事件として審理した結果、昭和六三年一〇月一三日、「本件審判の請求は成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をなし、その謄本は同年一一月一〇日に原告に送達された。なお、原告のための出訴期間として九〇日が附加された。

〔編注2〕本件における別紙は左のとおりである。

別紙

(一)本件商標

<省略>

(二)引用商標

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!